なごみの杜の療育では、保護者から聞かれる『気になること』や『困ったこと』等に対して、その行動の背景となっているものが何であるかを考え、解決していく方法を探っていきます。子どもの行動を理解していくにあたり、それぞれの子どもの発達段階や発達特性を確認するとともに、感覚統合療法理論の視点も取り入れながら分析していきます。
以下に療育の視点や生活の中での工夫等についてケースを通して紹介致します。
支援事例1:『落ち着きがない』と言われるA君の場合
「初めて行く場所や人が多い所では落ち着かない。」「人の物でも興味がある物は、パッと取ったり触ったりする。」等の母親の主訴で来所されました。
このお子さんの発達の特性を見ると、
等が見られました。
このことより、落ち着きがない理由として、ひとつは身体が動く感覚刺激を求めていること、聴覚情報又は視覚情報が選択できずに入って来てしまうこと、他動的な触覚刺激に過剰に反応してしまうこと 等 が見られました。
指導方針と成長
なごみの杜では、まずは本児が動きたいという欲求をしっかり満たすような活動を行いました。それによって動きたいという欲求は満たされ落ち着くこともありましたが、本児の場合は視覚刺激や聴覚刺激、触覚刺激の過敏さも見られることから、集団でのルールがある活動を行う時は合わせて環境の調整を行う必要がありました。不必要なものは出来るだけ目に付かないような場所に置き、出来るだけ静かな環境でしっかり注意を向けてから話をする、むやみに本児に触らない等を行うことで指示も入りやすくなりました。また、衝動的な行動をコントロールする為に、事前に流れを説明する等 見通しを持って行動が出来るようにもっていくことで随分行動がまとまりやすくなってきたと感じています。
支援事例2:『不安が強い』B君の場合
「何事にも慎重で毎月の予定が気になり、初めて行く場所や用事に関して事前に良く説明が必要。とても不安がる。」「音に対して敏感で、常にいろんな音が気になる。特にピストルの音、風船が割れる音、花火の音を異常に怖がる。」等の母親の主訴で来所されました。
このお子さんの発達の特性を見てみると、
等が見られました。
このことより、不安が強い理由として、いろんなことを理解するのに少し時間がかかる為、どう動いていいのかわからない不安があること。運動面のぎこちなさから他のお友達と同じようにすぐに動けない不安があること。聴覚や触覚に過敏さがある為、突然の音や接触に対して対応出来ない不安があること。等が考えられました。
指導方針と成長
運動面の発達に関しては、本児が能動的に参加できる活動から始め、少しずつチャレンジして身体を動かしていく中で、バランスの力や動きに合わせて姿勢を保持していく力、両手両足を協調させて動かす力が伸び、以前より上手に身体を動かすことが出来るようになってきました。それにより、JRで移動中揺れる車内でトイレに行くことが出来るようになったり、電車に立って乗れるようになったり等 生活の中でできることが増え、活動範囲が広がってきました。
聴覚の過敏さに関しては、学校側に説明し運動会のピストルを笛に変えて頂いたり、スピーカーから離れた位置に坐れるようにして頂いたり等の環境調整を行って頂きました。それにより、以前はパニックになっていたかけっこも耳をふさぎながらでも参加できるようになりました。
触覚の過敏さ(人に触られることを嫌う)に関しては、例えば皮膚科を受診した時は、皮膚科の先生にどういうふうに触って欲しい等、本児が耐えられる触り方を相手に伝えることが出来るようになることで、皮膚科の受診が出来るようになってきました。
初めて行く場所に関しては、下見をすることで見通しが立ちやすくなったり、わからないことを先生に聞いて確認することが出来るようになったことで、不安を持ちながらも楽しく参加できることも増えてきました。
このように感覚の過敏性に関しては、すぐに過敏性が軽減する訳ではありませんが、本児なりの対処法を見につけていくことで、本児なりに適応できる部分も増えてきているように感じます。本児なりに適応できていくことで、少しずつ自信にもつながり、以前程は不安を訴えてこなくなってきています。
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